スウェーデンが生んだスポーツ選手というと、古くはウィンブルドン5連覇をはじめ、数々の輝かしい記録を残したテニスプレーヤー、ビヨルン・ボルグ、今年国際テニス殿堂入りすることが決まったステファン・エドベリなどが有名です。しかし、近年大活躍のスポーツ選手というと、プロゴルフプレーヤー、アニカ・ソレンスタムをおいて他にいないのではないでしょうか。
アニカ・ソレンスタムという名前は知らなくても、昨年5月に、女子選手として58年ぶりに男子ツアーのバンク・オブ・アメリカ・コロニアルに出場した選手というと、ニュースで聞き覚えがある方は多いと思います。アニカが出場した大会初日と2日目には、600人を超す報道陣が集結。女子ゴルフプレーヤーの頂点に立った賞金女王の新たな挑戦を、全世界が固唾を飲んで見守りました。結果は残念ながら予選落ちでしたが、試合終了後の彼女の目には、やり遂げた満足感への涙が浮かんでいました。
その後も2003年8月にはイギリス中部ロイヤルリザム・アンド・セントアンズで行われた全英女子オープンで、韓国の朴セリと接戦のすえ、大会初優勝。メジャー4大会完全制覇を果たしました。同年の獲得賞金は191万4506ドル。3年連続6度目の賞金女王となり、圧倒的な強さを見せつけています。
アニカは1970年、ストックホルム郊外の小さな町、ブローで生まれました。スポーツ好きの両親の影響で、ゴルフを始めたのは12歳のとき。少女時代にはビヨルン・ボルグに憧れてテニスプレーヤーを目指し、国体にも出場した経験があります。その後、アメリカ・アリゾナ大学に留学してゴルフ部に所属。1992年に世界アマチュア選手権で優勝し、その後1993年にプロに転向しました。翌年1994年には米ツアー新人賞を獲得しています。
今でこそ、冷静沈着な女王の貫禄を身に付けたアニカですが、プロに転向した当初は自ら認める「引っ込み思案な性格」のために、なかなか勝つことができませんでした。中心にいることが苦手で、試合中も常に人の視線が気になっていたといいます。このため、1995年に初めて全米女子オープンに優勝したときの周囲の騒ぎはアニカにとって、苦痛以外の何物でもありませんでした。連日押しかける報道陣によって精神的に追いつめられ、2か月ほどゴルフから遠ざかったこともあったそうです。
そんな彼女に勝つ勇気を与えたのは、元スウェーデン・ゴルフ協会ヘッドコーチのピア・ニルソン。現在アメリカで活躍中の多くのスウェーデン女子プレーヤーを育てた名コーチです。ピアの、選手ひとりひとりの個性を尊重する指導方法により、アニカは勝ち負けではなく自分の限界に挑戦することを教えられ、その才能を開花させることができたのです。
1997年には、無名時代からアニカを支えてきたアメリカ人の青年デビッド・エッシェと結婚。現在はアメリカ・ネバダ州に住んでいます。料理の腕前は、オフシーズンに厨房に弟子入りしたこともあるほどの本格派。家でも気分転換によく料理をするそうです。
昨年、100人目の世界ゴルフ殿堂入りを果たし、名実共にプロゴルファーとしての頂点を極めたアニカですが「私の絶頂期はまだまだこれから。殿堂入りなんて歳を取ったみたいに聞こえるけど、これまで以上に若さに満ちあふれているような気がするわ」と語る通り、自らの限界への挑戦はまだまだ続きます。
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