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> 平和の伝統を礎に
長期的なビジョンが導いた福祉社会


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平和の伝統を礎に
長期的なビジョンが導いた福祉社会
早稲田大学社会科学総合学術院 教授/日欧研究機構機構長 岡澤憲芙

早稲田大学社会科学総合学術院 教授/日欧研究機構機構長
岡澤憲芙氏
> Reputation Institute Press Release (PDF)
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  スウェーデンの評判、国家ブランド調査で1位に
2010.12.15
2010年10月、ニューヨークのReputation Instituteによって行われた世評ランキング「CountryRep2010」で、スウェーデンが見事1位にランクインしました。スウェーデンが世界から評価されるポイントはどこにあるのでしょうか。これまでの歴史や社会の価値基盤などについて、北欧研究のパイオニアである岡澤憲芙氏(早稲田大学)に伺いました。

「今のスウェーデンの基盤は、およそ200年もの長きにわたって戦争をしてこなかったという事実にあります。2世紀も平和を維持している工業国は世界でも非常に稀で、素晴らしいことです」
そう話すのは、日本における北欧研究の第一人者、早稲田大学社会科学総合学術院教授の岡澤憲芙氏。1960年代中頃、当時21歳だった岡澤氏はシベリア鉄道に乗ってヨーロッパを旅します。日本において海外観光旅行が自由化となったパイオニア期に、初めてスウェーデンを訪れた氏は強い衝撃を受けます。
「胎児から墓場まで」と言われる今の福祉社会の土壌には、人々の政治への信頼
「胎児から墓場まで」と言われる今の福祉社会の土壌には、人々の政治への信頼があります
© Ann Lindberg
(写真提供 visit sweden)
「街は美しく近代的で、人々は誰もがにこやかで親切でした。冬にはあらゆるものが凍りつく厳寒の地で、資源的にも恵まれていないにもかかわらず……。驚き、なぜだろうと疑問を抱いたのです」
当時、スウェーデンは「黄金の60年代」と言われ、急激な経済成長の風を受けてさまざまな社会システムが整備されている時代でした。帰国して調べた岡澤氏は、スウェーデンが(当時)150年もの間戦争をしていないことを知ります。先進工業国の多くが経済成長を図る手段として戦争に突き進んだ中、不戦の歴史を持ちながら成長を遂げている。にわかに興味を引かれた氏は、国内ではそれまで誰一人先駆者がいなかったスウェーデン政治研究に着手します。

スウェーデンについて語られる時、キーワードとなるのが「平和」「環境」「人権」です。この3点は、スウェーデンの国づくりの揺るぎない立脚点となっています。「不安感と恐怖心を煽り、それを成長エネルギーに変えてきた戦後の日本とは、そこが大いに違う」と氏は言います。
「日本はキャッチアップ型で成長を遂げ、その結果として今の経済成長至上主義の社会ができあがりました。戦争によってすべてを失い、今日、明日がどうなるかも見えない国にとっては、当然の選択だったと言えるかもしれません。対してスウェーデンはそういった損失がなかったため、長期的視点で国家建設を考える余裕があったのです」

とは言え、スウェーデンが最初から余裕ある豊かな国だったわけではありません。 「元々、気候条件が悪く天然資源が豊富ではないスウェーデンはヨーロッパで最も貧しい農業国家と言われていました。19世紀の末から20世紀にかけ、食と職を求めておよそ100万もの人が海外に移住しています。当時の人口は450万人ですから、これは大変な数です」
ではそんな国が、どのように世界有数の先進福祉国家になったのでしょうか。そこには、成長を支えた4本の柱からなる国家戦略があります。
「世界指向、独創指向、隙間指向、バランス指向。スウェーデンの国家戦略はこの4本の支柱のもと、世界に先駆けた実験的な取り組みを次々に行っていきました。大量生産、大量流通、大量消費に先導された20世紀において、国内市場が小さな国は最初からハンデを負っているわけですが、スウェーデンはそのハンデを逆手に取ったと言えます。自国内だけで完結しない世界指向、オンリーワンの視点を重んじる独創指向、そして誰も手をつけていない場所を狙う隙間指向。国内の市場が小さいからこそ視点は最初から世界に向いていたのです」
その結果は、世界中で知られるスウェーデンの発明や製品、ビジネスモデルなどに見ることができます。コンピュータのマウスや複写機、ペースメーカー、温度測定基準の摂氏、それにH&M、IKEA、テトラパックなど、「スウェーデン発」は生活のさまざまな分野に散在しています。社会システムも同様です。1766年に世界で初めて制定された出版の自由法、1809年に制度化されたオンブズマンなど、現代に通じる社会システムがスウェーデンにはたくさんあります。
「象徴とも言えるのが、1901年に創設されたノーベル賞。これによって、世界中の研究・開発の情報が自ずと自国に集まってくるシステムをスウェーデンは築き上げたのです」
一方、バランス指向から生まれたのは福祉と経済成長の両立を実現する社会システムでした。「成長か福祉か」といった二者択一ではなく、ライフスタイルや産業構造の変化、経済状況などを考慮して軸足を柔軟に調整しつつ、社会基盤を強固にしていく政治工学スタイルです。この柔軟性は重要です。まず大胆に冒険をしてみる、ダメだと分かればすぐに中止して次の政策代案を実験する度胸とでも表現できます。
「現在、多くの先進国が少子・高齢化への対応に追われていますが、スウェーデンは1930年代中期にはこの問題に着目し、女性の社会参加支援などを積極的に行ってきました。経済発展時の1960年、絶妙のタイミングで税率4.2%の間接税を導入し、福祉を充実させていったのです」

ハンソン首相
福祉社会の幕開けは1930年代、ハンソン首相によって提唱されたFolkhemmet(国民の家)という概念から始まりました

スウェーデンが長期的な国家ビジョンを実現できた背景には、冒頭にも述べたように「平和の伝統」があります。
「平和は、経済財と政治財という2つの大きな財産を国にもたらします。経済財としては、世界をマーケットとした時にどの国でも反感なく受け入れてもらえるという状況や、戦争によって工業力や労働力を失うことなく安定した生産手段を保持できるといった点があります。政治財として何よりも大きいのは、国に対する国民の信頼でしょう。国民の財産と命を奪う戦争は、国政への信頼を根こそぎ破壊します。それまでに税金をいくら払っても、戦争にすべて注ぎ込まれてしまえば何も返ってこない。戦時国債が終戦後には紙切れになった日本を見れば、それはよく分かります。スウェーデンでは、若い時に高い税金を払っても、人生のどこかで必ずそれを取り戻せるという実感がある。平和に勝る福祉なしという言葉を、国民は体感しているのです」

こうした歴史が培った国政の安定は、国民の誇りや国外投資家にとっての魅力につながっています。今、スウェーデンに対する世界からの高評価や好感度は、未来を見つめる長期的な視点と、それをこつこつと実践してきた歴史が築いてきたものです。



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