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KNEGプロジェクトの一環として導入されている新しい物流ソリューションは、 物流の効率化と合理化を図る取り組みとして注目を集めています。
(写真提供 KNEG)
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道路運送--多くの人がこの言葉からイメージするのは、軽油を大量に飲み込んだ大型トラックが高速道路に詰め寄せ、もうもうと排気ガスを吐き出している、そんな光景ではないでしょうか。
しかし、道路貨物運送に対するこうしたイメージは、もうすぐ変わるかもしれません。2006年の終わりごろから、スウェーデンで、道路運送が気候に及ぼす悪影響を大きく削減する野心的なプロジェクトが始まっています。
プロジェクト名はKNEG (Klimatneutrala godstransporter:気候ニュートラル貨物運送)。焦点を当てているのは、複合一貫輸送、物流、代替燃料、スマートドライビングの4つの分野です。
KNEGは、スウェーデン道路庁の主導で始まりました。設立メンバーとして活動に参加しているのは、ボルボ・トラック、シェンカー、プリーム、シャルマース工科大学、そしてイエーテボリ大学の共同事業である環境・持続可能性センター(GMV)です。これらに加え、過去4年間でスウェーデンの大企業何社かと大規模な団体が加わり、「気候ニュートラルな貨物運送の実現」という長期的な目標を達成すべく、力を合わせています。
KNEGのメンバーが掲げる具体的な目標は、2020年までに長距離道路運送によるCO2排出量を、2005年比で半減すること。目標の期限までにはあと10年ありますが、メンバーは全力でプロジェクトを進めています。成果の一例としては、2008年、KNEGメンバーの対策によってCO2排出量が12万トン削減されたことが挙げられます。
スウェーデンの巨大企業ボルボは、世界をリードするトラックメーカーの1つです。言い換えれば、環境に多大な影響を与えうる立場にあります。同社の小さな改善の1つひとつが、何千トンものCO2排出量削減につながるのです。
ボルボ・グループ内では、各企業がCO2排出量の削減幅を競い合っています。各工場へトラック部品を運送するボルボ・ロジスティクスには、親会社であるボルボ・トラックから目標が伝えられました。内容は、2008年から2010年までの間にCO2排出量を20%削減するという非常に厳しいものでした。大半の専門家の見解は「不可能」。しかしボルボ・ロジスティクスはあらゆる予想を裏切り、目標の半分を超える12%もの削減を、すでに達成しています。
代替燃料に関しても、液体メタンガス、エタノール、バイオディーゼル(廃木材利用分も含む)などの有望な試みがいくつも進められています。また革新的な新技術は、液化ガス燃料トラックを短距離ルート制限から解放しました。すでに800キロまでの走行が可能になっています。つまり、液化ガスは真の代替燃料になりつつあるのです。数年後には、今より格段に環境性能の高いトラックが、ずらりと市場にお目見えしているかもしれません。一方でプリームなどの石油会社は、新型トラックの実用化に向けて、必要なインフラの整備に着手しています。
都市内における貨物運送分野では、発想の転換によって目に見える効果が生まれました。この分野は、非常に重要です。都市間の貨物運送は通常、鉄道や船で行なわれますが、都市内ではトラックが唯一の運送手段となります。トラックが担う数キロは、大抵の場合運送全体の最後の部分ですが、環境への影響は決して小さなものではありません。
沿岸都市イエーテボリの大気の質は、工業化社会の幕開け以来常に懸念材料となってきました。冬期には特に、その懸念は大きなものでした。しかしKNEGプロジェクトにより、イエーテボリでは全く新しい物流ソリューションが試験的に実施されています。
それは、市外の大型物流センターを使って物流の効率化と合理化を図る試みです。物流センターが果たすのは、いわゆる気付アドレスの役割です。各社が自社のトラックでわずかな積荷を運ぶのではなく、少数のトラックがすべての会社の積荷をまとめて運び、必要に応じて荷物を物流センターで積み替えるのです。
プロジェクトは、物流学者の協力を得て物流巨大企業のDBシェンカーが主導しています。この取り組みが成功すれば、イエーテボリと同じような構造を持つ世界各地の都市に普及していく可能性があります。
人間と環境の両方を大切にするという決意が込められた「緑の福祉国家」への道を、スウェーデンは着実に進んでいます。その歩みは、まだまだ留まるところを知りません。2009年3月、スウェーデン政府は「統合気候・エネルギー政策法案」を提出しました。同法案の主な目標は、2020年までに、1990年比で温室効果ガスの排出量を40%削減すること。これは、EU全体の目標である30%を大きく超える数値です。政治の強力なリーダーシップと、国全体に浸透している個人の利害関係を超えた環境保護の概念。スウェーデンの取り組みとその姿勢は、今後も世界に向かうべき方向を示す指針であり続けることでしょう。


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