文化遺産を象徴する顔ぶれ
スウェーデン中央銀行は、2014年ごろを目処に紙幣のデザインを一新することを発表しました。新紙幣の肖像に選ばれたのは、有名な映画監督や元国連事務総長、児童文学作家などです。それらの人々を、順に見ていきましょう。
まず、1000クローナ紙幣に選ばれたのは元国連事務総長ダグ・ハマーショルド、500クローナ紙幣にはソプラノ歌手ビルギット・ニルソンが選ばれました。そして、今回新たに作られることになった200クローナ紙幣には映画監督のイングマル・ベルイマンが、100クローナ紙幣にはスウェーデンを代表する女優のグレタ・ガルボが登場。そして50クローナ紙幣にはミュージシャンのエバート・タウベが、20クローナ紙幣には、著名な児童文学作家のアストリッド・リンドグレンがお目見えします。
中央銀行がこれらの人々を選んだ基準は、「1900年代に建設的かつ重要な文化的遺産を築き、多くの国民に愛され、国のさまざまな地域を代表すると同時に国際的に知られた人々であること」。新しい紙幣は、スウェーデン文化と共に国内の各地域を象徴するものとなります。
決定を巡って異論も
これらの人物が決定するまでには、およそ600人もの候補が挙げられました。サッカー選手のズラタン・イブラヒモヴィッチ、ポップミュージック界を牽引してきたABBA、言わずと知れたアルフレッド・ノーベルのほか、金色のゴルフクラブを手にしたタイガー・ウッズの元妻エリンや、「ザ・マペット・ショー」のスウェーデン人シェフなど、実にさまざまな人物が机上にのぼりました。
検討に検討を重ねて選び抜かれた人々に対し、国民からの反応はおおむね良好ですが、いくつかの異論もあります。例えばある新聞はこう書いています。
「20世紀の人物だけを使用するという中央銀行の意図に、私は賛成しかねる。我々は過去を受け入れることを恐れすぎている。現実を認めようではないか。スウェーデンの最大の象徴を20世紀に見いだすことはできない。19世紀以前に亡くなったカール・フォン・リンネやセルシウス、そしてノーベルといった人々こそ評価されるべきだ」
アーティストにチャンスを創出
肖像が決定した今、新紙幣のフェーズはデザインに移っています。表紙には人物が、そして背景にはそれぞれの人物に縁のあるスウェーデンの地方の風景が描かれる予定で、デザインはなんと、公募によって決められます。スウェーデン中央銀行は、アーティスト、デザイナー、建築家であれば誰でも応募の資格があると発表。すべてのスウェーデンアーティストに向け、歴史に名を残すチャンスを創出したのです。
応募条件は、各紙幣に使えるカラースキームに従って選ばれた肖像を使用することで、それ以外は自由です。選ばれたデザインがそのまま紙幣に使用されるわけではなく、デザインの土台にされることが規約ではありますが、“国の紙幣デザインに関わる”という可能性は、多くのアーティストに壮大な夢を与えています。
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ダグ・ハマーショルド (Dag Hammarskjold, 1000クローナ紙幣)
1953年から1961年に亡くなるまで国連事務総長を務める。背景はスウェーデン最北部ラップランド。
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ビルギット・ニルソン (Birgit Nilsson, 500クローナ紙幣)
ドラマチックなソプラノ歌手としてその名を知られる。2005年没。背景はスウェーデン南部スコーネ。
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イングマル・ベルイマン (Ingmar Bergman, 200クローナ紙幣)
絶望や愛と死などをテーマにした作品で知られる映画監督。2007年没。背景はバルト海に浮かぶゴットランド島。
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グレタ・ガルボ (Greta Garbo, 100クローナ紙幣)
ハリウッド黄金時代を築いた女優の1人。1990年没。背景は、グレタ・ガルボの墓地もあるストックホルム。
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エバート・タウベ (Evert Taube, 50クローナ紙幣)
フォークソングで知られ、スウェーデンで最も著名なミュージシャンの1人。背景は故郷であるヴェステルイェートランド北部の海岸沿いのブーヒュースレーン。
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アストリッド・リンドグレン (Astrid Lindgren, 20クローナ紙幣)
『長靴下のピッピ』で世界的に有名な児童文学作家。背景はスウェーデン南部のスモーランド。
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