6月19日、ストックホルムにはいたるところに花や国旗が飾られ、町中が歓喜のムードに包まれました。ヴィクトリア王女とダニエル・ヴェストリング氏の挙式が行われたのは、700年以上の歴史を誇るストックホルム大聖堂です。式の後、2人は馬車に乗って市内をパレード。沿道に集まった多くの市民から喝采を浴びました。
国民感情の盛り上がりを含め、さまざまな意味でこれほど大きなイベントがスウェーデンで行なわれたのは、実に34年ぶりだと言えるかもしれません。そう、1976年の6月19日、34年前のちょうど同じ日に、ヴィクトリア王女の父上であるカール16世グスタフ国王がシルヴィア・ゾマラート現王妃と結婚されたのです。
ストックホルム商科大学の調査によると、投資利益率面でみると、ロイヤルウェディングにかなうベンチャービジネスはほとんどないということです。同調査は、交通機関、ホテル、レストラン、買い物への支払いなどでスウェーデンに流入する臨時収入額は、25億スウェーデンクローネ(1クローネ=約11円*)にも上ると予想しています。
海外からこのイベントの取材に駆けつけたジャーナリストは、約2000人。また国外から、何百人もの招待客やVIPが招かれました。ほぼすべてのホテルが満室状態で、料金の相場も通常より25パーセント上昇。どのホテルも、この時期としては過去最高の売上を記録し、6月の営業収入は前年同月の2倍になったといいます。
ウェディングにかかった総費用が2000万スウェーデンクローネであることを考えると、ロイヤルウェディングは、ある意味で非常に効果的な投資であるといえます。また、費用の半分はスウェーデン国民が支払った税金から捻出されているものの、残りの半分は王女の父上である国王から出ていることは、忘れてはいけません。
こういった経済効果を含め、ロイヤルウェディングがもたらした果実は、とても大きなものです。さまざまな影響がありますが、そのほとんどが、スウェーデンのブランド力を底上げするものであることは間違いありません。ある調査では、スウェーデン王室のブランド価値は5億から10億クローナと推計されており、また別の調査では約50億クローナともいわれています。
最大の関心事は婚礼であるとはいえ、各国から多くのジャーナリストが集まったことで、スウェーデンに関するさまざまな情報が国外のメディアに紹介されました。たとえばニューヨークタイムズでは、スウェーデン家庭における男女の平等が報道されています。こうした好意的な記事の価値は数値化しにくいものの、長期的に見れば、福祉や機会均等の分野におけるマーケットリーダーというスウェーデンのイメージを、より強化するものとなるでしょう。
専門家のなかには、「『王室』という不平等で非民主主義的、かつ古めかしいものが、現代的で平等主義な福祉国家としてのスウェーデンの宣伝に使われる」という皮肉を指摘する人もいます。しかし、世界でも突出した福祉先進国であるスウェーデン、ノルウェー、デンマークの三国が、すべて立憲君主国であることも紛れもない事実です。
王室制度は時代遅れのものかもしれませんが、王も王女も結婚相手に市井の人を選んだことは特筆すべき点です。現代社会においては、民主主義と君主制は共存可能であり、君主制も時には非常に有益になりうるということを、この事実は示していると言えるでしょう。 
*2010年6月現在

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