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安心を共有する社会、スウェーデン
LIFE STYLE

玉川 徹氏
2010.06.22
2009年2月、テレビ朝日のニュース番組「スーパーモーニング」にて、「閉塞日本の問題を北欧に探る」と題された、スウェーデンの福祉社会を特集した番組が3日連続で放送されました。現地を訪れてレポートを行ったのは、政治行政問題への鋭い視点で知られる、テレビ朝日ディレクターの玉川徹氏です。スウェーデン大使館投資部(Invest Sweden Japan)は、去る6月3日に「スウェーデン・インベストメント・セミナー」を開催。基調演説の一員として玉川氏が招かれ、取材を通して知ったスウェーデン福祉社会の実際を、日本が抱える課題を交えながら講演しました。

世界に先駆けて高福祉社会を追求し、独自の税制と社会政策を組み合わせることで高い福祉水準を実現してきたスウェーデン。その取り組みと社会体制は「スウェーデンモデル」と呼ばれ、広く世界中に知られています。ただ、高福祉社会は、国民への負担を強いる高負担社会でもあります。
「スーパーモーニング」でスウェーデンを取り上げることになったきっかけは、「高額な税金で国民は満足なのか」という疑問だったと言います。
「当時のOECDによる生活満足度調査によると、日本の21位に比べ、スウェーデンは9位と上位に位置しています。消費税25%という高い税率でなぜ国民は満足なのか、非常に不思議に思いました」 そう語る玉川氏は現地に飛び、調査を開始します。日本との違いを探るべく、スウェーデンに住む日本人を含めて幾人もの人にインタビューするうち、次第にその「感覚」とも言うべき部分が見えてきます。
スウェーデン人の夫を持ち、2人の子どもを育てているある日本人女性は、「高い税率で満足?」という玉川氏の質問に対し、こう答えます。
「納得はしています。その分は還元されていると感じていますから」

スウェーデン産業の今
スウェーデンの国会議事堂
© Plattform/Johner

スウェーデンは、消費税や個人所得税が高いことでよく知られています。生活必需品や医療費など特定品目は減税されているものの、ほとんどの日用品に25%が課税されるほか、平均所得税は31.6%。こうした高税率にもかかわらず、「納得している」という答えが返ってくるのには、理由があります。
インタビューされた女性が具体例として挙げたのは、医療や教育における保障でした。スウェーデンでは、教育にお金がかかりません。家庭の所得に関係なく、大学まで誰でも無料で進学することができるのです。また子どもの医療費はすべて無料のほか、大人の医療費も年間900クローネ(1クローネ=約11円*)以上は無料となります。
また、老後の保障も大きな要素です。スウェーデンの年金システムは、基礎年金(すべての国民が一律)と所得比例年金の二本立てになっており、最低保障年金制度が機能しています。よって、年金を全く払い込まなかった人でも、一定の金額を受け取ることができます。ある年金生活者の老婦人は、玉川氏のインタビューに対してこう答えます。
「スウェーデンは人権を大切にする国。多少の不安はあっても基本的に安心を感じています」

スウェーデン社会のもう1つの特徴は、高福祉と経済競争力を両立している点です。取材以前、福祉国家は経済的に脆弱だと思い込んでいたという玉川氏。しかしフタを開けてみると、2009年のスウェーデンの国際競争力は4位(日本は8位)。キーワードは、「完全雇用」です。
スウェーデンの福祉政策の根幹には「全ての安心は雇用の安定にある」という考え方があり、国民すべての就労を目指して国は厚い雇用政策を整備しています。特筆すべきは、子育て支援制度です。スウェーデンでは、育児休暇は最長16カ月あり、そのうちの13カ月は最高で給料の8割が給付されます。また男性の育児休暇取得も推奨され、女性の職場復帰を促す促進力となっています。これら休業補償の財源は、企業が国に支払う社会保障税。スウェーデンの企業は、社員に支払う給与の33%を給与とは別に社会保障税として国に支払っています。
雇用市場大臣のスヴェン・オット・リトリーン氏は、国の手厚いサポートの背景には、「国民1人ひとりの労働力および納税への期待がある」と言います。人口900万人と規模の小さな国において、最も大切な資源は人です。
「私たちは、国民全員が働くことが大事だと考えています。より多くの人が仕事を持てば、経済的にも安定するでしょう」

高い税収を財源に手厚い福祉政策を実施しているスウェーデンですが、ある日突然税率がアップしたわけではありません。スウェーデンで増税が始まったのは、第二次世界大戦後に政権を担ったエランデル首相の時代です。「国民の父」と敬愛されるエランデル首相は、政治目標に掲げた「安心」を実現するため、税率の引き上げと福祉の拡充に力を注ぎます。増税路線は彼の退任後も引き継がれ、1960年に4.2%だった消費税率は1990年には25%に達しました。その間、政府が徹底して行ったのが「政治の透明性」の具現化です。税率を上げるたびに、その使い道を国民に明示し、恩恵をしっかりと形にすることで国民に増税の必要性を納得させてきたのです。 「スウェーデンでは、何かを隠すのは不可能です」と言うのは、元財務大臣のペール・ヌーデル議員。「公費から支出した領収書は誰でも閲覧することができますし、私たち国会議員は決して特別な存在ではなく、運転手付き公用車も持っていません。社会が開かれて見通しがよくなれば、人々は、より民主主義を信頼するでしょう」

取材を終えた玉川氏が、スウェーデン社会を俯瞰して印象的だと感じるのは、その「合理性」だといいます。
「生活の安全保障にしろ経済力にしろ、非常に合理的な仕組みができあがっていると思います。政治行政と国民が一体となって、何が国にとって有益なのかを徹底的に追求した結果、今の社会――全国民で福祉を分担するという共生社会を実現した。『自分だけがいい』ではなく、安心も不安もすべて全員が共有していることに、高福祉社会のキーがあると思いますね」
そして現在の日本を振り返って、こう結びます。
「日本は今、岐路に立っています。常に不安がつきまとう競争社会――アメリカ型社会にこのまま進み続けるのか、スウェーデン型社会を選ぶのか。政治行政はもちろん、私たち一人ひとりが真剣に方向性を考えるべき時です。個人的には、日本がスウェーデンから学べることは多いと感じています。特に、教育と所得格差を切り離すこと、そして女性の就労を妨げる要素は徹底して排除すること。この2つは今すぐに取りかかるべきだと思います」

*2010年6月現在

 



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