スウェーデンの小売ブランドは、日本の消費者にとってますます身近になってきています。IKEAやH&Mだけでなく、小規模なファッションブランドやデザインブランドも日本に何社か進出しています。しかし反対に、日本の小売ブランドが同じようにスウェーデンで親しまれているかというと、そうではありません。
スウェーデンで親しまれている日本のブランドとしては、MUJI が挙げられます。MUJIは2004年秋、スウェーデンに上陸して以来、百貨店のオレンス内にオープンし、この6年間で店舗数を7店舗まで増やしています。ただ、MUJIの他に際立ったブランドはありません。スウェーデンでも活躍する日本ブランドをもっと呼び込みたい、と意気込むのがアンナ・ハマべリです。
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Invest Swedenの投資アドバイザー、 アンナ・ハマベリ
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ハマべリはInvest Swedenの投資アドバイザーの一人で、観光業界と小売業界を担当しており、Invest SwedenJapanの主催で6月3日に開かれた「スウェーデン・インベストメント・セミナー2010」の関連で東京を訪れました。
欧州の外れにあるスウェーデンに小売業が進出するメリットはどこにあるのでしょうか。
「スウェーデンはその国家規模に比較して、国際的な工業系企業の数が多いことでよく知られています。しかし、買い物天国でもあることはそれほど知られていません。実はスウェーデンの小売業は非常に強く、国内経済の中で最も成長著しいセクターの一つなのです。
スウェーデンの小売業界は14年連続で年間3〜4パーセントの伸びをみせています。2009年でさえこの成長は止まりませんでした。人口900万人あまりのスウェーデンは、決して巨大市場とはいえませんが、それでも欧州北部では最も大きな市場です」
昨年来、他の多くの市場が停滞しているにもかかわらず、スウェーデン人の消費は衰えていません。これについてはどう説明されますか?
「それは、スウェーデン経済が総じて強く安定していることに関係していると思います。スウェーデンも他国と同じように2008年の金融危機に晒されましたが、大半の国よりもかなり健全な国家財政で、それに立ち向かうことができました。またスウェーデンの消費者は強い購買力をもっています。しかし最も重要なのはおそらく、多くの他国民よりもスウェーデン人が将来への安心感をもっていることではないでしょうか。消費者の安心感はメンタル的な問題です。最近の予想では、小売業界の3〜4パーセント成長は、この先15年は続くだろうとされています」
よく知られていることですが、多くの国際ブランドがテスト市場や製品開発地としてスウェーデンを選んでいます。
「そのとおりです。スウェーデンで成功すれば欧州のどこででも成功する確率が高い、とよくいわれています。スウェーデン人は教育水準が高く、新しい発想やトレンド、技術に対する受容度も概して高い国民です。新しいトレンドをいち早く取り入れるのがスウェーデン人なのです。
その理由はおそらく、スウェーデンが長年、輸出市場に依拠してきたことにあると思います。スウェーデン労働者の少なからぬ人数が、国際的な業務に長年携わっています。彼らは観察力にすぐれ、あらゆるところからアイディアを拾います。またスウェーデン人は、休暇になれば旅行を楽しみますし、英語を始めとする外国語を流暢に話します。世界のトレンドにもとても敏感ですね」
現在スウェーデンでは約130もの外国の小売ブランドが事業を展開しています。そのほとんどは他の北欧諸国と欧州北部のブランドです。好調な小売業界にあって、現在最も急成長している分野は耐久消費財です。
「急成長中のもう一つの分野はショッピングモールです。今のトレンドは、ショッピング体験にはっきりとした付加価値をつける、というものです。現在のショッピングモールは、1960年代にスウェーデンを侵食し始めた、どちらかといえば無骨なショッピングセンターとはかけ離れたものです」
フランチャイズもまた急激に成長しています。スウェーデンは昔から、起業家の国というより、経営のしっかりした大企業の国とされてきました。これは過去には正しかったかもしれませんが、現代のスウェーデンにはほとんどあてはまりません。フランチャイズに魅力を感じる新世代のビジネスマンが増えているといいます。
「また、Eコマースも急成長分野の一つに挙げられます。驚くべきことに、スウェーデン人の3分の2、つまり成人人口の約70パーセントがインターネットで毎月何かを購入しています。現在スウェーデン国内のEコマースは年20パーセントのペースで成長を続けています。スウェーデン人はITに明るいため、Eコマースも喜んで受け入れるのです。スウェーデンは人口当たりのコンピューター台数では世界1位、人口当たりのインターネット利用者数ではアイスランドに次ぐ世界2位となっています」
現在の為替レートも日本の投資家にとって参入の追い風でしょう。2008年の秋以降、スウェーデン通貨のクローナは日本円に対して約40パーセントも下落しています。また、不動産の取得価格やビル賃料も、ロンドン、パリ、ローマなどの都市と比べて低い水準にあります。
「ロンドンなどの都市では、一等地の賃貸料がストックホルムの3倍という場合もあります。またそれらの都市では一等地を見つけること自体が極めて難しいのです。一方、ストックホルムやスウェーデン国内の他の主要都市部では、外国のトップブランドも比較的簡単に最高のロケーションを見つけられます。これらは今の不動産オーナーたちが高い関心を示すようなテナントです」
「Invest Swedenは、小売に関するノウハウや立地についてのアドバイスを提供し、事業の立ち上げに際しては最後まで継続的に支援します。ストックホルムに限らず、スウェーデン国内の隅々までを網羅する専門家のネットワークを有しています。
「私たちは外国の小売ブランドにぜひスウェーデンに来ていただきたいのです。競争は誰にとっても利となります。スウェーデンには、消費者と投資家の両方からの、海外ブランドに対する需要があるのです。IKEAやH&Mの世界的成功によって、スウェーデンの小売業界への注目が高まることを期待しています。
また私たちは、スウェーデンに移住する外国人家族に対し、家族が住む家を見つけたり、子どもの通う学校を探したりといった実践的なサポートもいたします。これからスウェーデンに来る外国企業には、長期にわたってこの国に根をおろし、成功を収め、成長していって欲しいと願っています」
スウェーデンでの小売ビジネスにご興味がおありでしたらInvest Swedenまでお問い合わせください。さらに詳しい情報をお伝えします。


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