スウェーデンが米国、欧州、その他の北欧諸国を中心に世界中の投資家を引き寄せる魅力は、過去10年間にわたり常時20パーセントを維持する高い年利にあります。一方、欧州と米国の平均年利は約12パーセントにとどまっています。
北欧諸国で最も有名なのはおそらく、その革新性で成功を収めているICT(情報通信技術)企業でしょう。しかしバイオテクノロジー分野も、投資件数と被投資額の両面で北欧をリードする産業となっています。また、ライフサイエンス分野への投資も近年飛躍的に増加しています。
高く、安定したリターン
スウェーデンはなぜ、これほどまでに外国直接投資を集めることができたのでしょう? スウェーデン・プライベートエクイティ・アンド・ベンチャーキャピタル協会(Swedish Private Equity & Venture Capital Association、SVCA)の広報部長、ヤン・セーゲルフェルト氏は次のように語ります。 「スウェーデンのプライベートエクイティは、年ごとに非常に高い安定したリターンをもたらしており、当然ながらこれは外国投資家にとって非常に魅力的です。スウェーデンのベンチャーキャピタル企業では、資本の70パーセントを国外の投資家が支えています。また、投資家はスウェーデンの高水準な技術、研究、教育にも着目しています」
しかし、何事にも弱点はあります。スウェーデンの弱点は中小企業にあると、セーゲルフェルト氏は言います。 「スウェーデンは、巨大な公営企業と数多くの大企業の国でした。つまり、小規模企業のビジネスモデルがあまりないのです。しかし、新政府は改善の必要性を認めており、同分野に資金投入する計画です。状況は好転していくでしょう」
一方でセーゲルフェルト氏は、エリクソンやABBといった大企業が小規模企業に優れた学習の場を提供していると指摘しています。さらに、人口が比較的少ないため、スウェーデン企業が初期の段階から輸出や多様化に目を向けざるを得ない点も、プラス要因になり得ます。
ライフサイエンス分野に強み
スウェーデン投資振興庁(ISA)のイルバ・ウィリアムズは、アストラ(現アストラゼネカ)やファルマシア(現ファイザー)など、100年以上の歴史を持つ大手製薬会社もスウェーデンに大きく貢献していると考えています。 「スウェーデンはライフサイエンス分野に長い伝統があります。このノウハウが、製薬会社における運営方法の礎となっているのです。現在スウェーデンには、イノベーションから開発、製剤、治験、生産に至るまで、製薬業界のバリューチェーンにおける各要素を担う企業がすべてそろっています」
成熟度を高めるIT産業
レブテル社(Rebtel)は、米国カリフォルニア州のシリコンバレーの投資家から巨額の投資を受けたスウェーデン企業の1社です。レブテルが提供する携帯の無料通話サービスは今、米国ベンチャーキャピタル業界が最も注目している分野です。レブテルのCEO、ヒャルマル・ヴィンブラド氏は、インターネット、通信業界のスウェーデン企業家は概して、豊富な経験を持ち、優秀で革新的と言います。しかし、5、6年前に起きたようなITバブルが再発する危険はないのでしょうか? ヴィンブラド氏は、その恐れはないと考えています。 「現在ではベンチャーキャピタリストも企業家も、以前より経験を積んでいます。前回のバブルを経験し、復活を果たした人たちは特にそうです」。前出のセーゲルフェルト氏も同意見です。「現在私たちは、慎重かつ高度なリスク管理をしています。IT産業もここ数年でかなり成熟し、経営方法も変わってきています」
次はクリーンテクノロジーの時代
ライフサイエンスやITは、“現在”脚光を浴びている分野です。では、“次に”注目されるのはどんな分野でしょうか? SVCAが行った今後の開発動向の調査によると、環境技術、いわゆる「クリーンテクノロジー」が上位3位に入っています。
先ごろ、スウェーデンでサステナブル・テクノロジー・パートナーズ社(Sustainable Technology Partners)を立ち上げたアンドレ・ハインツ氏はアメリカ人で、スウェーデンの環境技術に投資するベンチャーキャピタリストです。ハインツ氏は、この分野に対する政府およびビジネス界の姿勢と戦略において、スウェーデンは世界で最も進歩的な国のひとつと感じています。 「スウェーデンは、地熱ポンプや地域冷暖房、エネルギー効率化、バイオ燃料、リサイクル、浄化技術など数多くのクリーンテクノロジーで世界をリードしています」と、ハインツ氏は言います。
ハインツ氏はさらに、自身が投資しているクリーンテクノロジー企業はすでにシード期、スタートアップ期を終え、急成長期に来ていると言います。 「これらの企業は最先端技術を有しており、業界の急成長によって恩恵を受けています。その成長率は年25パーセントから50パーセントに上ります」
成功の連鎖
それでも、対スウェーデン投資の急増ぶりは、これらの理由では説明しきれません。もちろん、世界規模の力強い経済成長が一因であることは明らかです。そして、スカイプにも投資するインデックスベンチャーズ(Index Ventures)のゼネラルパートナー、ダニー・ライマー氏がビジネスウィーク誌に語った次の言葉が、その答えになるかもしれません。 「スカンジナビアは、世界レベルのサービスを次々に生み出す、世界レベルの企業家を輩出してきました。そしてその数はここ数年、増え続けています。成功は成功につながるのです」
ファクトシート
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スウェーデンのプライベートエクイティ産業は30年以上もの歴史を有している |
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2000年から2005年にスウェーデン株式市場に参入した企業10社のうち、6社がプライベートエクイティ企業から融資を受けている |
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スウェーデンのプライベートエクイティの市場規模はGDP比1パーセント以上で、欧州で2番目に大きなプライベートエクイティ市場となっている |
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プライベートエクイティから融資を受けたスウェーデン企業の総売上高は、およそ1700億スウェーデンクローナに上る |
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スウェーデンのプライベートエクイティ企業が持つ資本金の約70パーセントが外国投資家によるもの |
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プライベートエクイティへの最大の投資家は年金基金で、全体の約30パーセントを占めている |

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