バイオエタノールは、温室効果ガスを発生させない再生可能な燃料です。欧州の国々が豊富に産出する穀物や木材などを原料とすることや、液体のため既存の燃料供給インフラを利用することができるといったメリットにより、石油の代替燃料として注目を集めています。OECD(経済協力開発機構)/IEA(国際エネルギー機関)は、今後15年以内にバイオエタノールがバイオ燃料の主流になるだろうと予測しています。
スウェーデンはアルコール燃料の使用に長い歴史があります。1975年に交通手段の原油への依存からの脱却を図り、メタノールとガソリンの混合燃料による試験を開始しました。その後、1980年代前半にはアルコール燃料の研究はほぼ、エタノールに集約されました。同プログラムの重点項目のひとつは、エタノールを燃料とする大型車用圧縮燃焼エンジンを、スカニア社製トラックおよびバス向けに開発することでした。
このプログラムにより、1980年後半から90年代の初めにかけて、ストックホルムに32台のエタノールバスが導入されました。そして、この試験プロジェクトをサポートするためにエタノール燃料への免税措置が取られました。現在では、エタノールバスはストックホルムのスタンダードとなり、その台数は253台まで増加、2006年中には約400台に達する見込みです。さらに、ウメオやイェブレをはじめとするスウェーデンの他の都市でも導入が進んでいます。
スウェーデンの15年に及ぶエタノールバスにおける経験は今、エタノールバス・バイヤーズ・コンソーシアムを通じて国外に輸出されています。マドリッド(スペイン)、ロッテルダム(オランダ)、ラ・スペッツィア(イタリア)、南陽(中国)の各都市、およびスウェーデン北部のクラスター「BioFuel Region」がすでにエタノールバスのデモンストレーションを行うこと決定しています。
デモンストレーションは、エタノールバスの本格導入を始める前の第一ステップで、EUがサポートするBEST(BioEthanol for Sustainable Transport)プロジェクトの一環として行われます。ここでは、ストックホルムで運行中のものと同じスカニア社製のエタノールバス5〜30台を使用し、都市のバス会社にエタノールバスの導入に必要な燃料、インフラ、エタノールエンジン、運転、メンテナンス、乗客の反応などを経験してもらいます。
デモンストレーションの結果に満足した参加者は、バスの機能や性能の向上を目的としたエタノールバス・バイヤーズ・コンソーシアムに加入することができます。そして、欧州市場に1000台のエタノールバスを投入するというコンソーシアムの目標達成に向け、他の参加者と協力していきます。
京都議定書は、EUの温室効果ガスの排出を2010年までに8%削減し、1990年レベルに引き下げるという目標を設定しました。バイオ燃料は、この目標を達成するために有効な手段のひとつとされています。発電など、他のエネルギー分野にも積極的にバイオ燃料を採用し、真剣に化石燃料からの脱却を図っているスウェーデンに、今、世界中が注目しています。

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