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スウェーデンの工業デザイン界で女性が躍進


ボルボのYCC
©ボルボ・カーズ

2005.06.15
近年、スウェーデンのデザインスタジオで実績を上げる女性が著しく増えています。世の中に、異種の才能を受け入れる態勢ができてきたということでしょうか?スウェーデン工業デザイン分野における女性デザイナーの活躍をご紹介します。

ボルボのYCCの内装。
好みに合わせて交換できる
©ボルボ・カーズ
YCC(Your Concept Car)は、ボルボが2004年3月にジュネーブで開かれた国際モーターショーに出品した新しいコンセプトカーで、デザイナー3人を含む女性のみ9人のチームによって設計されました。ターゲットは「最も注文の多い消費者層である、キャリアウーマン」。未だかつてないこのコンセプトは、ボルボとYCC設計チームの思惑どおり、大反響を呼びました。「ついに出た!」と思った女性もいたでしょう。しかし、彼女たちの中には、新しい「女性車」は従来の「男性車」とあまり違いがないと、がっかりした人もいたかもしれません。

いずれにしろ、YCCはある事実を再認識するきっかけとなりました。それは、スウェーデンでさえも工業デザイナーはほとんどが男性であること。それでも、デザインスタジオで働く女性の数は10〜15年前に比べればかなり増えてきています。スウェーデン工業デザイン協会(SID)には330名強の会員がいますが、そのうち女性は100名弱。同協会のテキスタイルデザイン部門では、この男女比は見事に逆転します。約70人の女性に対して男性はたった1人なのです!

工業デザインにおける男女とは?

スウェーデンで活動する女性工業デザイナーの中には、先進的で複雑な技術の生産システムを持つクライアントに、女性が斬新なアイデアを提案するのは難しいと感じている人もいます。軽く見られる、チーム内では男性が注目されることが多いなど。しかし一方では、女性デザイナーであることの利点もあるそう。「ソフト価値」への注目が高まるにつれ、女性デザイナーへの注目も高まってきた、というのです。


イネス・ユングレン氏デザインの
掃除ロボット
©エレクトロラックス

自動車産業では依然として男性デザイナーが有力ですが、ボルボ・トラックのデザイン部長アイナ・ニルソン氏のように、この業界で成功している女性もいます。また、外形のデザインは男性が手がけ、布素材や内装のカラースキームは女性デザイナーが担当することも多くあります。その好例が、デザイン賞を受賞した、ボルボBMのホイールローダーL150(1992年)とアトレ(Atlet)のパレットトラックTLL20およびTLP20(1993年)です。これらの外形デザインは男性デザイナーが担当し、内装デザインとカラースキームは女性デザイナー、イネス・ユングレン氏とマリア・ツュンベリー氏の2人が手がけました。イネス・ユングレン氏は、エレクトロラックスの掃除ロボット、トリロバイト(2001年)もデザインしています。

スウェーデンの女性を魅了するインタラクティブデザイン

女性の工業デザイナーが増えれば、日常生活でわたしたちが使う製品は外見を変えるのでしょうか? マリア・ベンクソン氏は、スヴェン=エリック・ユリーン氏と組んで、主に工業デザインの分野で長年活動してきました。2人は、スウェーデンで最もよく知られ、国際的にも評価されているデザインスタジオ、エルゴノミデザインで仕事をしています。ベンクソン氏はテキスタイルデザインの訓練を受けたデザイナーですが、子どもや運動機能障害者のためのさまざまな機器や補助器具のデザインで、数多くのデザイン賞を受賞しています。

「わたしは、女性だから差別されていると感じたことはありません」とベンクソン氏。「仕事は常にチームで行います。女性も男性もそれぞれの体験を共有することで、お互いを補完しています。開発プロセスに加わる女性が増えたからといって、わたしたちが製作する商品の外見や機能がすぐにどこか変わることはありません」。

4年間フィンランドでノキアのデザイナーをしていたマル・アルペール氏は、現在スウェーデンに戻り、マイラ・デザインスタジオで働いています。アルペール氏は5年前、ウメオ・デザイン大学でデザイン修士号を取得しました。大学のクラスで彼女は唯一の女性でした。卒業論文でアルペール氏は救急車の中にいる患者をモニターするシステムを開発し、注目を集めました。

「時には、声を張り上げないと意見を聞いてもらえないと感じることもあります。でもそれはわたしが女性だからなのか、まだ若すぎるからなのかはわかりません。ただ、ここ数年でデザインスタジオ内の男女比は少し均等に近づいているようです。特に、わたしが専門としているインタラクティブデザインは、まだ完全に確立していない新しいデザイン分野で地位階級もできていないため、その傾向が強いようです」とアルペール氏は語ります。

異なるニーズを満たすデザイン

エレクトロラックスの消費者アウトドア部門のデザイナー、シュティーナ・ニリマー・ウィックストレーム氏は、年齢や性別、文化の異なる人同士を組み合わせてみるチャレンジ精神が最も大切と言います。異種の人間と常に議論をしなければならないのは大変な作業ですが、多種多様な人々に向けて商品を製造する大企業にとっては、不可欠なことなのです。

「全体的に見れば、わたしたちは正しい方向に向かっていると思います」と、ウィックストレーム氏。ストックホルムの芸術工芸デザイン大学(Konstfack)で昨春開かれた学生展覧会では、新卒の女性デザイナーたちが発表した工芸デザインプロジェクトが最も注目を集めました。

4人の女性デザイナーが構成するフロントというデザイナー集団も注目を集めています。面白く非日常的であることをデザインの原則とし、人々のニーズの裏にある心理的なメカニズムの解明に注力しています。そこから得た新たな洞察を将来の工業デザインに活かしたいと彼女たちは考えています。

便利さは万人に共通

発表された当時、YCCは女性による女性のための車と喧伝されました。しかしYCCのデザイナーたちは、この車は男女を問わずすべての人のための車だと主張します。

女性が車に求めることとして一般に挙げられるのは、乗り降りのしやすさ、駐車の容易さ、スマートな収納方法などです。これらはもちろん、男性にとっても使いやすさにつながります。最も便利な収納スペースは運転席と助手席の間ですが、通常そこにはギアレバーとハンドブレーキがあります。YCCではこれらを移動。ギアチェンジをハンドルでできるようにし、ハンドブレーキは電子制御にしました。また、多様性を好む女性のために、8種類のシートクッションとそれぞれに合う交換可能なマットが用意されています。

この他、開くとサイドステップが下がり、乗り降りの際にまたがなくてもよいガルウイング・ドアを採用。車の四隅を確認しやすいように、ボンネットを低くしてフロントフェンダーを高くし、リアウインドウの形状も工夫するなど、結果として男女を問わずすべてのドライバーが良好な環境で運転できる車になりました。

コンセプトカーであるYCCは、製品化されることはありません。しかし、YCCに結集された女性開発チームによる優れたアイデアの数々は、ボルボ全体の製品開発に影響を与えていくことでしょう。

出典:Swedish Institute



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