−アダカラムとはどのような製品ですか?
アダカラムは、日本抗体研究所(JIMRO)が開発した画期的な治療用機器で、日本では2000年に発売されました。日本では潰瘍性大腸炎の治療に、欧州では主に潰瘍性大腸炎、クローン病などの治療に用いられています。アダカラムは酢酸セルロースで調製されたビーズをポリカーボネートのカラムに詰めたもので、患者の片腕の静脈から取り出した血液を、このアダカラムを通してもう一方の片腕の静脈に返血します。血液がアダカラムを通る間に酢酸セルロース・ビーズが患者の血液から炎症起因性の血球を除去することにより、炎症を抑制するサイトカインを体内で産生させて病気を治します。また、患者の骨髄からは自然に新しい正常な血液細胞が作り出されるため、免疫機能が正常化します。
−なぜ、画期的な治療機器といわれるのでしょう?
これまでの治療では体内に医薬品を入れることにより、異常な活動を起こしている細胞を殺したり、炎症性のサイトカインをブロックしたりして病気の症状を抑えてきました。慢性・重症の患者ではステロイドのような異物を長期間、もしくは大量に使うものですから当然、副作用があります。一方、アダカラムは患者の体内には何も入れず、炎症起因性の細胞を体内から取り除くだけですから、重篤な副作用は起こりません。アダカラムの究極の目的は医薬品フリーにすることです。ですから、医薬品ではなく、治療用医療機器と呼んでいるのです。
−スウェーデンに進出された経緯を教えてください
スウェーデンにはノーベル賞を審査するような世界的に優れた科学者、医学研究者を輩出したカロリンスカ研究所があり、企業に左右されない純アカデミックな研究を行う風潮があります。アダカラムのような革新的な医療方法を、純粋に学問的な見地から評価していただきたかったのが第一の理由です。また、北欧は歴史的な軋轢が少なく、学問的にも、政治的にも欧州の中で中庸の立場をとっており、製品の販売
および マーケティング活動がやりやすいのです。さらに、福祉国家であるスウェーデンは患者データベースなどがドイツ、イギリス、フランスよりも整備されており、アダカラムの普及にとって、最適な条件がそろっていました。
−アダカラム治療センター設立の主旨を教えてください
アダカラム治療センターの目的は、100%に近い確率で患者を医薬品フリーにしていくという理想を実現することです。アダカラムの臨床開発および販売活動において、中心的な役割を担ってきたストックホルムのソフィアヘメット病院内に開設しました。ストックホルム行政区以外の患者にも治療センターに来ていただきやすくするために、センター化を行っています。
−スウェーデンと日本の医薬品業界を比較すると、いかがですか?
日本は健康保険によってふんだんに医薬品、治療用医療機器が使用されており、一流の医師がコストを心配して治療をしなければならないということはありません。福祉国家であるスウェーデンにも健康保険制度がありますが、一流の治療医師は地方自治体の医療検討委員会のメンバーも兼ねており、医薬品、治療用医療機器を無制限に使うことに歯止めがかかります。その点、医療保険の支出はスウェーデンの方が健全と言えるでしょう。しかしその分、新しい製品を薬価償還リストに載せること自体、日本よりもスウェーデンの方が難しいのです。この高いハードルをクリアし、アダカラムをストックホルム行政区とスコーネ行政区の薬価償還リストに載せることができたことを誇りに思っています。
−センター設立に当たっては、ISAもお手伝いさせていただきました。
さまざまなリサーチを通してスウェーデンに拠点を置くことを決め、意気揚々と現地に乗り込んできたわけですが、何分住んだことも、ビジネスをしたこともない国。本社からは現地法人を作れとの指示があったのですが、何から着手したらよいのか分かりません。そんなときにISAの存在を知ったのです。早速、ストックホルムの本部に連絡を取り、会社登記にあたっての必要資料や会計事務所に関する情報などを提供してもらいました。センター設立後もスウェーデンに進出している他の日本の製薬会社との夕食会を主催して、情報交換の場を与えてくれたりといったこともありました。何かと親切にしていただき、とても良い印象を受けました。
−今後の展開、抱負を教えてください
アダカラム・ビジネスを成功させることが夢です。これは、21世紀の革新的な医療方法を提案・提供することでもあります。パイオニアとして確立していったアダカラムのビジネス、治療用医療機器のビジネスを通じ、私たちは北欧にいながら欧州市場全域を見通すことができたと考えています。このような経験が、欧州を目指す他の企業のお役に立てれば幸いです。スウェーデンは人間関係の面でとてもビジネスのしやすい国です。日本企業のみなさんにはスウェーデンに進出して損はありませんよ、とお伝えしたいですね(笑)。
|