1988年、レセニウスさんは、数人の技術者やエンジニアと共に先端のIT分野に特化したコンサルティング会社をストックホルムに開設しました。12年間経営したその会社において、最後の5年はモバイル大手のエリクソンのコンサルティングを手がけました。このエリクソンとの協力関係が非常にうまくいったことが、現在コロンビテックの核となっている業務、つまり携帯用コンピューター機器からワイヤレスで安全に情報を転送するソフトの開発を立ち上げるきっかけとなりました。その後レセニウスさんは、2000年にコロンビテックを設立。日本のMICやスウェーデンの投資会社レッドシャーナン、サーヴィセン、T-ボラーゲット、ペラーゴが株主となっています。
コロンビテックはそのセキュリティの高い情報転送用ソフトのおかげで、市場において短期間で強力な地位を確立しました。現在、取引先には軍関連のトップ・シークレットを世界中に発信している米国防衛庁ペンタゴンも名を連ねます。民間の企業では、アメリカを拠点とする世界最大級の小売チェーンなどが挙げられます。同社では、コロンビテックのソフトを本社、店舗、営業などの間で企業秘密扱いの情報を相互に素早くやり取りするために使用しています。また、スウェーデン政府や国会もコロンビテックの情報転送技術を利用しています。
日本人とは仕事のやり方が合う
2004年4月、MICはコロンビテックに150万USドルの追加投資を行いました。この増資には、コロンビテックにとってはより高品質なワイヤレス・ソリューションを提供する可能性が広がり、MICにとってはモバイル技術におけるセキュリティ分野を強化するといった、相互にとってのメリットがあります。MICは、NTTドコモを主要株主に持つワイヤレス通信およびインターネット分野専門の投資会社で、2003年よりコロンビテックの株主となっています。
MIC代表取締役社長 西岡郁夫氏は、優れたワイヤレスセキュリティ・ソリューションを提供するコロンビテックの力を確信していると言います。「コロンビテックは、米国や欧州市場における、顧客とパートナー企業を含む優れたマネージメントチームにより、短期間で目覚ましい成長を遂げました。同社は私たちのサポートにより、日本でもビジネスチャンスをつかむことができるでしょう」
この言葉の通り、コロンビテックは日本に支社を設立することを決定しました。同社は現在、小売販売は直接手がけず、すべてパートナー企業を通しています。日本にある3社のパートナーのうちの1社が、東芝テックです。
レセニウスさんは、日本のパートナーをはじめとする投資企業との協力関係を賞賛し、お金第一のアメリカ企業と比較しながら、日本には本当の意味で協力し、長い信頼関係を築いていけるという希望を持っています。
「日本人は、仕事のやり方も私たちスウェーデン人にぴったり合いますね。考え方や仕事の仕方にお互い通じるものがあるんです」
それでも、カルチャーショックを完全に避けることは難しいと、レセニウスさん。スウェーデン人は無愛想なので、失礼に見られることがあります。また、スウェーデン人同士のコミュニケーションは率直で明快です。イエスはイエスで、ノーはノー。微妙な点はありません。
「日本人は礼儀正しく、遠慮がちです。気持ちはノーでも、ノーとは言いません。ですから日本人側が電話を切りたいと思っていても、スウェーデン人側がそれを理解できずにセールス・トークを続けてしまうことがあります。そんな場合は日本の文化に認識が深い、日本国内のパートナーと協力関係にあることがとても貴重です」。そう語りながら、レセニウスさんはMICやISAを例に挙げました。
相互に学びあえる良きパートナー
日本企業と協業したいスウェーデン企業が、日本のビジネスから学べることは何でしょうか、とレセニウスさんに聞きました。
「私たちスウェーデン人は、日本人の正確さや辛抱強さを学ぶべきです。そうすれば日本人との話し合いを円滑に進めることができるでしょう。それから、日本の企業間にある誠実さを見習うべきです。日本では私たちの常識を超えた範囲で、お互い助け合っています。良いビジネス環境に到達するためには、私たちも同様に努力すべきです」
レセニウスさんは、小規模企業であるコロンビテックにさえ示される、日本人の尊敬や思いやりの気持ちに感銘しています。「日本人は人が好きです。そして、人への興味や思いやりを通じてよい協力関係を築いており、それが有益なビジネスにつながっています」
同じ目標を持って協力していくということに、企業規模の大小は関係ありません。
「ソニー・エリクソンが良い例です。日本人とスウェーデン人が、お互いの長所を伸ばし合っています。いずれも勤勉で、実力があります。他にもこういった協力関係を通じて、たとえばバイオ技術や医薬品の分野などでも、成長していく可能性があるのではないかと考えています」
レセニウスさんは、IT分野に限らず日本とスウェーデンのさらなる協業に期待を寄せています。「日本市場の販売経路を利用して、日本の投資家がさらにスウェーデンの製品に注目してくれるといいですね」。

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