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マーティンソンの
オフィスインテリア
Photo by Martinsons Trä AB |
鉄よりも火に強い木材――ウソのような話ですが、事実です。「集成材は鉄鋼よりも耐火性に優れており、そのうえ見た目も美しく、強度も高いのです」。エドルンドさんは、マーティンソンの主力製品である集成材の持ち味をこのように語ります。
マーティンソン(Martinsons Trä AB)の歴史は古く、創業者のシーグル・マーティンソンが1930年代、ディーゼルエンジン駆動の製材用大型のこぎりを携えて遠方まで出向き、製材作業を請け負っていたことに始まります。そして1939年、シーグルはスウェーデン最北部のビグドシルユムという町で、個人経営の小さな製材所を開業しました。製材を生業とする人の多いビグドシルユムには、木材に関する豊富な知識の蓄積があったのです。以降、マーティンソンは順調に業績を伸ばし、現在では380人の従業員を擁する企業グループに成長しました。
マーティンソンは、伐採した木材を出荷前に加工する集成材の必要性を早くから認識していました。1965年には集成材の加工を開始し、現在では4本の加工ラインを有しています。同社の集成材は堅木を加え、ヨーロッパの他の地域の木材よりも25〜30年も長い時間をかけて育てた木を使用しています。これが高品質な集成材を作る秘訣、とエドルンドさんは言います。「時間をかけて成長した木は密度が高く、品質も優れています。この木材の品質が、最終製品である集成材の出来を左右するのです」。
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ビグドシユルムにある
マーティンソンの工場
Photo by Sara Hedman |
グループ会社、マーティンソン ヘルネス(Hällnäs Såg
AB)の工場内部
Photo by Gösta Wendelius |
現在、マーティンソンの総売上高は8億5000万〜9億スウェーデンクローネ(約125億〜133億円)で、製品の半分を輸出しています。集成材に限ると輸出率は70パーセントに上り、その大半は日本向けです。これまで、日本では未乾燥材が使われることが多く、乾燥後の収縮が大きな問題となっていました。未乾燥材を誤った工法で使用すると、環境に悪影響を及ぼすことにもなります。この問題に関し、エドルンドさんは「乾燥材である集成材を使用し、乾燥材の正しい工法を用いて建築を行えば、白カビも発生しにくくなり、完成後の建物の質も大幅に向上します」と、説明しています。
日本人との共通点が成功の鍵
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マーティンソンが手掛けたサンズヴァルにある自転車・歩行者用の橋
Photo by Björn Arbinger |
エドルンドさんは、集成材と木材のこれからの市場に関して、停滞ぎみのドイツに代わり、日本に期待を寄せています。輸送コストの面でも船便が安くなり、現在はヨーロッパ向けも日本向けも、大きな違いはありません。マーティンソンの日本への輸出は増加してきており、今後も増え続ける見込みです。
また、エドルンドさんにとって、日本は「仕事をしやすい国」とのこと。「日本人とスウェーデン人には多くの違いがあるようですが、本質的な部分ではよく似ています。特にスウェーデン北部の人間は、日本人と同じようにビジネスを慎重に進めます。迅速に契約を取り付けるよりも、よい関係を築いていくことを重視します」。
さらに、お客さまを大切にするというマーティンソンの理念も、多くの日本企業に見ることができるものです。「わたしたちは、現時点で取引のない企業との関係も大切にします。たとえ今は製品を購入してくれなくても、コネクションを持つことに意味があるのです」。これら日本人と共通する気質のお陰で、今日のマーティンソンがあるとエドルンドさんは語ります。
長期計画に基づいたビジネス戦略
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集成材の製品
Photo by Martinsons Trä AB |
順調に業績を伸ばしているマーティンソンにとって、販売に影響を及ぼすスウェーデンクローネの高値は大きな懸念材料です。集成材の価格が下がったこともあり、粗利益を維持するためには販売量を増やさなければなりません。木材市場における競合が激化するに伴い、より多くの利益が見込めるサプライチェーンの川下に相当する木材加工に、多くのメーカーが参入してくるとエドルンドさんはみています。
このような過酷な競争を勝ち抜くためのマーティンソンの戦略は、同社最大の強みである高品質な製品の安定供給を維持しつつ、日本への投資を続け、同地での売り上げを伸ばしていくことです。「当社の日本との付き合いは10年になりますが、今後も少なくとも10年はこの関係を維持していきたいと願っています。木材産業における日本とスウェーデンとの協業は、お互いの国にとって、得ることころが大きいでしょう」。
木材業界に長きにわたり、実績を築いて来たマーティンソン。これからも時流に流されることなく、長期の展望に基づいたビジネス戦略で市場の勝ち組としての地位を堅持していきます。その長期計画を順調に進めるためには、日本との良好な関係が必要不可欠なようです。

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