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抗体医薬に新しい可能性を拓く
第一三共とバイオインベント社の提携
株式会社アシックス執行役員/グローバル事業室室長 加藤 克巳氏

第一三共株式会社

> 第一三共株式会社
> バイオインベント社(英語)
2011.06.17
第一三共株式会社とスウェーデンのバイオベンチャー企業、バイオインベント社が、2009年11月に抗体医薬の共同研究を目的としたライセンス・アライアンスを結びました。提携までの経緯やプロジェクトの進捗について、日々研究に勤しんでいる第一三共の4名の研究者にお話を伺いました。(記事は二部構成になっており、一部は第一三共株式会社のインタビュー、二部はバイオインベント社のインタビューが掲載されています )
独自の強みと安定した技術
インタビューに応えてくれたのは、アライアンスマネジャーとして契約締結に至るまでを統括的に指揮してこられた古賀貞一郎さん(工学博士)のほか、いずれも第一三共の抗体医薬研究所に籍を置く3名の研究者です。古賀さんと共に、契約までの実務部分を担ってきた農学博士の高橋亘さんと薬学博士の我妻利紀さん、そして現場の第一線で研究に取り組む農学博士の渡辺一郎さんは、それぞれのグループで互いに協力しながら新しい抗体医薬の開発に臨んでいます。
「バイオインベント社の強みは、独自の優れたヒト抗体ファージディスプレイのライブラリーを持っていることです」と言うのは我妻さんです。2006年頃から高橋さんと共にドイツやイギリス、アメリカなどに足を運び、提携に最も適切な企業を探し続けてきました。
抗体医薬品の開発に用いられる最もポピュラーかつ古典的な方法は、タンパク質を抗原としてマウスに免疫し、マウスの体内で抗体を作るというものです。ただ、そうしてできた抗体を人に投与するためには、遺伝子の組み換え作業(ヒト型化)が必要です。しかしバイオインベント社のライブラリーから取得される抗体は元々ヒト型であり、抗体分子のヒト型化のプロセスを必要としません。また、免疫する方法では取得できない作用を有する抗体も取得が可能です。
さまざまな企業を訪れて検討を進める中、スウェーデン大使館投資部からバイオインベント社を紹介されます。当時のことを、高橋さんはこう振り返ります。
「同じような技術を持つ企業を知っていたため、最初はそれほど大きな期待はありませんでした。しかし実際に担当者と話してみて、他企業に比べて技術基盤が非常に高いことが分かり、『これは』と思いました。またバイオインベント社は業界の中でも極めて早い時期から技術開発に着手しており、コンペティションがかからないのも大きな要因でした」 
こういった強みに加えて、提携に踏み切る決め手となったのは、実際にスウェーデンを訪れて目にしたバイオインベント社のワークスタイルでした。
「チームワークがとても良く、ラボマネジメントも効率的でした。医薬品の開発には非常に長い時間がかかります。安心して研究に取り組むために、技術だけでなくソフト面は非常に大切です」と語る我妻さん。また、古賀さんは研究者たちと接する中で、その姿勢にも信頼感を持ったと言います。
「スウェーデンの国民性なのかもしれませんが、彼らは万事においてとても慎重です。“できる”と確信したことしか口にしない。決して大風呂敷を広げたりしませんし、約束したことを後から簡単にくつがえしたりしませんから、安心して仕事に取り組めるんです」

左から渡辺一郎さん(第一グループ主任研究員、農学博士)、我妻利紀さん(第一グループ長、薬学博士)、高橋亘さん(第三グループ長、農学博士)。3名とも第一三共株式会社抗体医薬研究所に在籍。 左から渡辺一郎さん(第一グループ主任研究員、農学博士)、我妻利紀さん(第一グループ長、薬学博士)、高橋亘さん(第三グループ長、農学博士)。3名とも第一三共株式会社抗体医薬研究所に在籍。

研究スピードへ大きな後押し
現在、プロジェクトは関連会社を含めて複数の形態をとって進んでいます。バイオインベント社から移管された技術を使い、抗体を獲得する研究を担当する渡辺さんは、共同研究のメリットをこう説明します。
「我々が持っている既存の技術では限界があった標的分子に対し、別のアプローチが見いだせることが大きな利点です。バイオインベント社の技術はファージディスプレイ法といい、固相化したヒトタンパク質の抗原に100億個を超えるファージのライブラリーを反応させ、標的とする抗原に結合する抗体を拾い出すというもの。従来のマウスに免疫する方法では難しかった、マウスのタンパク質とよく似たヒトのタンパク質に対する抗体の作製も、ファージディスプレイ法なら問題なく行え、さらに拾い出した抗体の結合力を高めることも可能です」
創薬の世界では、スピードは非常に大切な要素です。医薬品として他社に先駆けて市場に上市することは、その後の医薬品の市場占有率や売上に大きく影響し、企業経営を左右する要因となるからです。ファージディプレイ法は、医薬品になる可能性を持つ抗体を選び出す母集団を拡大し、抗体医薬品開発全体のスピードを上げることを可能にしています。

現在、プロジェクトは順調に進んでいるといいます。3人とも、このパートナーシップに深く満足しています。 「バイオインベント社の技術と我々の開発力が、非常にいい形で連携しています。ベストパートナーに巡り会えたことに心から感謝していますし、これを抗体医薬品として結実させるために、精一杯取り組みたいですね」(我妻さん)


進化を続ける
スウェーデンのライフサイエンス

スウェーデンは、ヨーロッパでも有数のライフサイエンス先進国です。高い技術力を持つバイオベンチャー企業も多く、世界的な製薬会社とのパートナーシップのもとで、新しい医薬品の開発に貢献しています。本稿ではそんなバイオベンチャー企業の一社、バイオインベント社のリンダ・ネックマールさんにお話を伺いました。

多様性に富んだ独自の抗体ライブラリー
バイオインベント社のリンダ・ネックマールさん
バイオインベント社
リンダ・ネックマールさん
スウェーデンのバイオテクノロジー企業、バイオインベント社(BioInvent International)が初めてのロードショーを行った2007年当時、日本の抗体医薬はまさに黎明期にありました。
「これまでの歴史の中で、日本の製薬会社のほとんどが化学品を重視してきました。しかしその風潮は少しずつ変化し、2007年頃には私たちが持っているヒト抗体技術への注目は、次第に高まっていました」
そう語るのは、バイオインベント社のビジネスデベロップメントマネジャー、リンダ・ネックマールさんです。バイオインベント社は、南スウェーデンのルンドに拠点を構えるバイオベンチャー企業で、およそ90名の研究者が働いています。規模はそれほど大きくありませんが、その技術力によって世界のさまざまな製薬企業から熱い視線を集めるようになっています。
同社が手掛けているのは、時として生命を脅かす深刻な病気を持つ患者向けの、抗体医薬の開発です。現在同社は、がんや血栓症、アテローム性動脈硬化の治療薬の開発を進めています。抗体とは、病気に対して体内で防衛の役割を果たす糖タンパク質のこと。抗体分子は、病気の元となる病原体やがん細胞の抗原に特異的に結合し、生体防御のための免疫系として作用します。そのため、医薬品として用いるのに非常に理想的とされています。
バイオインベント社は「n-CoDeR®」という名の、高度に機能的で、かつ多様性に富んだ抗体ライブラリーを開発しました。この同社固有の抗体ライブラリーは、バイオインベント社の迅速かつ的確な抗体発見の土台となるものです。

「私たちは約200億個のヒト抗体遺伝子の抗体ライブラリーを持っています。これは、標的とする抗原に対して高親和性、高特異性の抗体を見出だす可能性を飛躍的に高めるものです」(リンダ・ネックマール)

日本市場の開拓を進める
2007年に入ってから、バイオインベント社はInvest Swedenと定期的に連絡を取り合い、日本でのパートナーを探してきました。Invest Swedenの幅広いネットワークは、バイオインベント社にとって非常に有益だと言います。また契約締結までの話し合いにおいて、独自性の高い抗体ライブラリー「n-CoDeR®」が重要なunique selling point (USP)になっていることは言うまでもありません。これまでに、バイオインベント社は田辺三菱製薬株式会社や第一三共株式会社など、日本の大手製薬企業3社と共同研究の契約を結んでいます。
ネックマールさんは言います。
「日本市場はいま、私たちにとって最も重要な市場の一つ。長期的なビジョンを持ってこの地でのビジネスを成長させていきたいと思っていますし、今後の展開にも大いに期待しています」
ネックマールさんをはじめとして、バイオインベント社の社員たちはこれまでに何度も日本に足を運んでいます。現在もいくつかの日本企業がバイオインベント社に興味を示しており、彼らが日本を訪れる回数は今後ますます増えていくでしょう。 「日本のパートナーとの仕事は、本当に楽しいです。スウェーデン人と日本人は考え方がとても似ていますね。どちらも話し合いを通じて合意形成することを好み、ひとつのプロジェクトに関わるすべての人が満足するために、時間と手間をかけることを惜しみません」



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